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計算戦隊シソクレンジャー
第7話 ハクション帝国の悲劇


「Sir.」
「Sir.」
「Sir.」
 はるか彼方から声がする。

 ヒクちゃんマンが、その声に気づいた。
「おや?私の名を呼ぶのは誰だ」
 説明しよう。ひくちゃんマンの本名は、Sir.(差) 引地である。
 そしてこの時のひくちゃんマン、明らかにイチジョウマンのマネをしている。

「あそこだ!サー!!」

 ジャンプするひくちゃんマン。
 しかし50cm先に頭から落ちる。ベチーン!
 50cmというのは何mなんだろうか、と考えながら頭をかいて起きあがるヒクちゃんマン。
 ヒクちゃんマンが空を飛べるというのは設定になかった。
 仕方がないから歩いて行ってみた。
 そこにいたのは、な、なんと!



 場面は変わって、久しぶりのハクション帝国。

 スンチーがコックドーに叱られている。

(…お前たち。最近たるんでないか?…)

「そんなことはない!」

(…光線源の質が少し落ちているぞ。邪念が含まれているのではあるまいな。
  もっと集中しろ…)

「…貴様に何がわかるというのだ!」

(………)

「ちっ、消えやがったぞ」

「や、でも親分、邪念が入ってるというのは本当かも知れませんぜ」
「わしらちょっと、魔王様が授けてくれた力の強さをずっと気にしてたので」
「ぶり返すようで何ですが、魔王様は何ゆえこんな微弱な力しか我らに授けてくれなかったのであろうか」
「石化されているから微弱な力しか授けられないのかもしれない」
「いやあ、石化は関係ないだろう。あの魔王さまなら、石化されていてももっと強い力を授けられるはずだよ」

「我らを信用してないのかもな。強い力を授ければ、自分が部下にやられてしまうかもしれないと考えたのかも知れないぞ」
「おかげでコックドーには叱られ、自分たちは闘いに行くことができず、毎朝滑稽な儀式を行う羽目に…」

「やめないか」

「あ、親分」
「スンチー様、そもそも魔王様はなぜ、石化されてしまったのですか?」
「お前たちは知らなかったのか?」
「知りません。敵にやられたのか、手下にやられたのかも」
「あの石化はな、魔王様が自分でやったものだよ」
「何ですと!?」

 一同、ハッと息を飲む。
 スンチーは子分たちに、魔王が石化に至ったいきさつを語り始めた。

 ハクション帝国は昔、自分らが最高戦士だと考える民族で、やることなすこと血も涙もなかったのだ。
 特に魔王の独裁政治、恐怖政治は誰もその強さゆえに文句をいうことができなかった。

 ただでさえ強いのに、ある時、世界征服のために魔王はある必殺技を編み出した。
 その必殺技とは、「石化魔波(タータプラズマ)」というものだ。
 タータというのは、歯石のことだ。 歯についている汚れが石の様に固まった物だ。
 口から吐き出すくしゃみが魔の波動となって、相手を石化させてしまうのだ。

 魔王は、手始めに部下を実験台にしようとした。
 魔王が選んだのは、たまたまそこにいた俺の先祖だった。
 石化魔波を受け、俺の先祖の「祖スンチー」は命を落とした。
 しかし、魔波を受けた瞬間に、その魔波の8分の1が仮面の角に当たって、
 魔王の体に跳ね返った。
 その結果、魔王自ら、不完全ながら石化してしまったのだ。
 560タータの8分の1がどれくらいか分かるかい。
 お前たちには分からないだろうな。俺にもわからない。

「親分、1つ不思議なことがあるんですが」
「何だ」
「親分のご先祖様が死んでしまったのに、親分はなぜここにいるんですか?」
「祖スンチーが死んだとき、2つになる子どもがいたんだよ」
「へえ そうだったんですか」

 まあ、その時から、魔王の独裁政治はストップした。
 しかし代償として、500年間の間に国が存亡の危機に陥ってしまったのだよ。
 しかもこの500年の間に、国民の士気も非常に下がり、ほら、俺たち弱いだろ。

「祖スンチーの子ども、父親の顔は覚えてないだろうな…」

 そこだよ。
 祖スンチーの子孫は代々、石化した魔王を側近として守るフリをしながら、
スキを見て祖の敵を取る、ということを、残された家族から言い聞かされ、運命づけられているのだよ。
 ただ、魔王が石化してしまっているので、そのままでは手出しできないのだ。
 石化が固くて壊すこともできないし、途中で魔王が目覚めたらどうなることか。
 石化していても魔法は使えるからな。

 今回は、加減乗除の秘宝によって、石化が解けるかも知れない、
 石化が解けたら敵をとる!
 そう俺は、心に決めているのだ。

 俺が魔王に秘宝のことを報告した時、500年ぶりに目が覚めた魔王は、
 目の前にいる俺のことを、祖スンチーだと思いこんでいたな。
 だいたい、俺たちは魔族でも戦闘民族でもない普通の人間だぜ。
 普通の人間が500年も生きられるわけないだろう。
 だから俺は、祖スンチーになりすましていたのだ。
 これも、仇を討つための作戦の一つさ。

(…スンチー、しかと聞いたぞ…)

「コックドー、聞いていたのか!」

(…魔王の石化を解く方法は、これまで解明されていなかったのだ。
 しかし、我がルート国の、高度に発達した歴史学・化学・魔学等の研究により、
 石化を解くには加減乗除の秘宝が必要だということが判明したのだ。
 それで、我はお前に魔王復活の手だてを教えたのだ)

「俺の仇討ちに協力する気だったのか?」

(…勘違いするな。
 第一その仇討ち話は今初めて聞いたばかりだからな。
 魔王の力も、我がルート国の前進には必要なのだ。
 お前たちの光線源では微弱すぎるからな…)

「結局は利用する気なのだな。まあよい。
 いずれにせよ、魔王を復活させることが先決だ」

(…よいか、魔王が復活しても、すぐには殺すな。
 ルート国前進のために利用させてもらうからな。
 もっとも、お前たちの力では魔王を殺せまい。ワッハッハ…)

「親分、このままビリビリ光線源の上納って、続けるべきなんでしょうか。
 何か、魔王様が復活する意味って我々にとってあるんだかないんだか…」
「ばかやろ。魔王には石化していた分、働いてもらわねばならないんだよ。
 500年の間に、この国はすっかり荒れてしまった。
 しかも魔王が自ら蒔いたタネでだ。
 石化が解けたら、まずこの国を魔王の力で元に戻してもらわねばならないんだよ」

 自分たちで貧困の国を立て直そうという気はさらさらないのか、スンチーよ。

つづく。